「映画か、療法か」──ピクサー『エリオ』、LGBTQ描写削除の舞台裏

映画

2025年6月公開のピクサー新作『エリオ』。
製作費(広告費を除く)1億5000万ドルに対し、世界興行収入も同額という映画興行収入的には赤字になりました。(映画の内容は素晴らしかった)。

もともと『エリオ』には、主人公の少年がゲイであることを示唆するシーンが存在していました。
ピンクの自転車や、男性への恋愛感情を夢想する場面です。
これらは、ゲイであることを公表しているエイドリアン・モリーナ監督の自伝的要素を反映したものでした。

しかし早期試写で映画は大失敗。観客の大半が「金を払って見たくない」と答えた結果、ピクサーのCCOであるピート・ドクターは全面的な作り直しを決断。
モリーナ監督は降板し、LGBTQの描写も削除されました。

ドクターは理由を「私たちは映画を作っているのであって、何億ドルもの療法を提供しているわけではない」と話しています。

所感

『エリオ』にゲイの描写を盛り込んだのは、自身もゲイであるエイドリアン・モリーナ監督でした。これは企業の政治的判断ではなく、自分の人生を作品に刻みたいという、クリエイターとして極めて純粋な動機から生まれたものです。

ただ、この「当事者が自分の経験を描く」という行為には、独特の難しさが伴います。自身の痛みや経験は「理解してほしい」という気持ちと結びつきやすく、それが物語の中で「説教」に転じるリスクがあるのです。
また、本筋のストーリーの本筋と上手くかみ合わない可能性がありそうですね。

対照的に、『ズートピア』や『エレメント』が成功しているのは、マイノリティのテーマが物語の「添え物」ではなく「エンジン」になっているからです。偏見や異質な者同士の共存が、そのままストーリーの核心的な葛藤と一致している。だから説教にならず、自然に響いたのでしょう。

ともかく、案外ディズニーのLGBTQ要素は政治だとか活動家株主だとかそういう、単純な白黒的な話ではないということでした。

著者プロフィール

TDRだけじゃなくて映画やウォルトや海外パークも好きなDオタを増やしたいというエゴで動画をあげています。

メインは映画関連と海外ディズニー。
たまに思想の強いディズニーの歴史モノを潜らせています。

maruchandisneyをフォローする
映画
スポンサーリンク
maruchandisneyをフォローする